この記事の要点
- 施策を何もしていなくても、同じ日の 3 回の計測で出現率は 69.3%・64.0%・60.0% と動きました
- この揺らぎの幅に収まる変化は、施策の効果とは言えません
- モデル名を毎回記録し、施策と数字を時系列で並べ、変化は事実として書きます
LLMO の効果検証では、何を切り分けるのですか?
施策の前と後で出現率を比べたとき、数字を動かしうる要因は施策だけではありません。
| 数字を動かしうる要因 | 内容 | 切り分け方 |
|---|---|---|
| 回答の揺らぎ | 同じ条件でも回答は毎回変わる | 揺らぎの幅を先に測っておく |
| AI 側のモデル交代 | 裏側のモデルが別の版に変わる | 回ごとにモデル名を記録する |
| 参照される情報源の変化 | 比較記事の更新、競合の掲載など | 引用元の変化を記録する |
| 計測条件の変化 | 質問の文面・回数・時間帯・地域など | 条件を固定し、変えたら記録する |
| 施策の効果 | 自社が行った施策の影響 | 上の 4 つを除いたうえで、時系列で並べる |
何もしなくても、数字はどれくらい動きますか?
当方の計測で、同じ日の同じ質問群を 3 回に分けて集計しました。
| 1 回目 | 2 回目 | 3 回目 | 幅 | |
|---|---|---|---|---|
| 対象サービスの出現率(全体) | 69.3% | 64.0% | 60.0% | 9.3 ポイント |
| うち Gemini 2.5 Flash | 76.0% | 76.0% | 76.0% | 0 ポイント |
| うち Claude Sonnet 4.6 | 76.0% | 56.0% | 52.0% | 24.0 ポイント |
| うち GPT-4o mini | 56.0% | 60.0% | 52.0% | 8.0 ポイント |
| 競合 1 の出現率(全体) | 90.7% | 88.0% | 86.7% | 4.0 ポイント |
施策も、モデルも、質問も変えていない 27 分の間に、全体で 9 ポイント、エンジンによっては 24 ポイントの幅で動きました。この幅に収まる変化は、施策の効果とは言えません。しかも揺らぎ方はエンジンごとに違い、ほとんど動かないエンジンもあれば、大きく動くエンジンもありました。
AI 側のモデル交代は、どう見分けますか?
モデル交代は、利用者の側からは気づきにくい変化です。見分けるには、計測のたびに次を記録しておく必要があります。
| 記録すること | 理由 |
|---|---|
| エンジン名とモデル名(版まで) | 月をまたいだ比較で、同じモデル同士かを判定する |
| 実施日時 | 開発元がモデルの更新を発表した日と照らし合わせる |
| 引用元のドメイン(検索をする AI の場合) | 参照先の構成が急に変わったら、仕組みの変化を疑う |
比べる 2 つの計測でモデル名が違う場合は、その差を施策の効果として報告しないのが原則です。同じモデル同士の期間で比べ直すか、モデルが変わったことを注記して「比較の参考」にとどめます。
当方はまだ、モデル交代をまたいだ前後比較を、公開できる形では持っていません。上の手順は、実測ではなく計測設計上の注意として書いています。
施策の効果は、どう記録すればいいですか?
因果を断定できない前提で、判断の材料を残すことに徹します。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 施策の前に、同じ条件で 1 回測っておく | 前の数字がないと、変化があったかどうか自体が分からない |
| 揺らぎの幅を知っておく | 同じ条件で複数回測り、どこまでが自然な変動かを掴む |
| 施策と数字を時系列で並べて残す | 何をいつ行い、数字がいつどう動いたかを並べるだけにする |
| 施策の対象外の質問も一緒に測る | 施策と関係のない質問も同じように動いていれば、AI 側の変化を疑える |
| 変化は事実として書く | 「施策後の計測で、出現率は X% から Y% に変化した」 |
| 主張 | 根拠の強さ | 根拠 |
|---|---|---|
| 何も変えなくても、出現率は同じ日のうちに数ポイント以上動く | ◎ 実証 | 当方の実測(9.3 ポイント、エンジン別では最大 24.0 ポイント) |
| 施策の前後で数字が動けば、施策が効いたと言える | ✕ 否定されつつある | 揺らぎ・モデル交代・情報源の変化と区別できない |
| 施策の対象外の質問を比較に使うと、AI 側の変化を切り分けやすい | △ 仮説 | 考え方としては有効だが、当方はまだ検証していない |
| 施策の効果が表れるまでは 1〜3 か月 | △ 仮説 | よく言われる目安だが、根拠は経験則 |
根拠の強さは、◎ 実証(当方の実測、または複数の独立した調査が同じ結論)/○ 有力/△ 仮説/✕ 否定されつつある、の 4 段階で示しています。