この記事の要点
- 対象社が圏外だった回に AI が根拠にした 10 件のうち、8 件が第三者の比較・ランキング記事で、対象社のサイトは 0 件でした
- 同じ日の通常の検索では、対象社のサイトは上位でした。検索順位と AI の根拠は一致しませんでした
- 比較記事に載れば推薦されるとまでは言えません。掲載の前後を比べた実測は、当方もまだ持っていません
AI の引用元には、どんなサイトが入っていますか?
Web 検索をしてから答える AI に、士業(相続分野)の事務所を探す質問を投げ、対象社が圏外だった回の引用元 10 件をそのまま分類しました。
| 引用元の種類 | 件数 | どんなサイトか |
|---|---|---|
| ランキング・おすすめ記事 | 3 | 「◯◯に強い事務所 20 選」のように、複数の事務所を順位や一覧で紹介する記事 |
| 発注先の比較・紹介サービス | 2 | 企業や個人が依頼先を探すための比較サイト |
| 分野別のポータルサイト | 2 | 税理士や相続の情報を集めたポータル |
| 業界の求人サイトに載った記事 | 1 | 士業向けの求人サイトが掲載した「◯選」形式の記事 |
| 競合の自社サイト | 2 | 同業の事務所の公式サイト |
| 対象社の自社サイト | 0 | — |
10 件のうち 8 件が第三者の比較メディアでした。 見た目の形式はさまざまですが、「複数の事務所を並べて紹介している」という点は共通しています。
この回に推薦された 4 事務所には、それぞれ比較記事が根拠として添えられていました。競合の自社サイト 2 件のうち、1 件はその事務所が推薦された回のもの、もう 1 件は 3 回を通して一度も推薦されなかった事務所のものです(AI に引用はされるのに、推薦されない)。
なぜ、自社サイトではなく比較記事が根拠になるのですか?
観測できた事実と、そこから考えられることを分けて書きます。
まず事実です。同じ日に同じ質問を Google の通常の検索で調べると、対象社のサイトは上位に表示されていました。それでも、この回の AI の根拠 10 件には 1 件も入っていません。検索で上位にあることと、AI の根拠に選ばれることは、この回では一致しませんでした。
また、引用元の顔ぶれは回ごとに変わります。同じ質問の 2 回目・3 回目では、1 回目になかったドメインが加わり、対象社のサイトも引用元に入りました。そのとき対象社は 1 位で推薦されています(AI の回答に登場したのは、引用された回だけだった)。
一方、同じ分野の質問に地名を加えると、構成が変わりました。推薦された事務所の多くは、その事務所自身のサイトが根拠として示されていました。「比較記事が大半」は、地名を含まない「おすすめは?」型の質問で観測されたことだと、範囲を限って読む必要があります。
そのうえで、考えられる理由は次のとおりです。いずれも仮説です。
- 「おすすめは?」という聞き方と、「◯選」「ランキング」という記事の形式が、そもそも噛み合っている
- 1 ページで複数の候補を比べられる情報は、「複数を挙げて答える」回答の材料にしやすい
自社サイトを直しても、AI の回答は変わらないのですか?
変わらない、とまでは言えません。2 回目・3 回目のように、自社サイトが材料に入る回はあります。ただ、この回で AI が読んでいたのは大半が第三者のサイトで、自社サイトは参照される材料の一部でしかありませんでした。
ここまでの主張を、根拠の強さとあわせて整理します。
| 主張 | 根拠の強さ | 根拠 |
|---|---|---|
| AI が根拠にしたサイトの大半は、第三者の比較記事だった | ◎ 実証 | 本記事の実測(1 問・1 回分の引用元 10 件) |
| 引用元に対象社のサイトが載っていた回だけ、対象社が挙がった | ◎ 実証 | 同じ質問の 3 回。連動の観測であり、因果の証明ではない |
| 検索順位が高くても、AI の引用元に入るとは限らない | ◎ 実証 | 同じ質問・同じ日の観測(1 回) |
| 地名を含む質問では、事務所自身のサイトが根拠になりやすい | △ 仮説 | 地名を含む質問 1 回の観測 |
| 比較記事に掲載されれば、出現率が変わる | △ 仮説 | 掲載の前後を比べた実測を、当方はまだ持っていない |
最後の行は、当方がいちばん伝えたい留保です。「比較メディアに載れば AI に推薦される」と言い切れる実測を、当方はまだ持っていません。自社でも掲載の前後を測る準備をしている段階です。
根拠の強さは、◎ 実証(当方の実測、または複数の独立した調査が同じ結論)/○ 有力/△ 仮説/✕ 否定されつつある、の 4 段階で示しています。
優先すべき比較記事は、どう見つけますか?
引用元を回ごとに書き出し、次の 3 つの軸で並べます。
| 引用される回数 | 競合は載っているか | 自社は載っているか | 扱い |
|---|---|---|---|
| 多い | 載っている | 載っていない | 最優先で確認する |
| 多い | 載っている | 載っている | 載り方(掲載順・説明の量・数字)を確認する |
| 多い | 載っていない | 載っていない | 分野の選び方・質問の設計を見直す |
| 少ない | — | — | 様子を見る |
「載っている」だけで安心はできません。1 回目の引用元に入っていた比較サービスの 1 つには、対象社も紹介されていました(同じ日に通常の検索で確認。引用された記事と同一のページかどうかまでは記録していません)。それでも 1 回目の回答では、対象社は挙がっていません。
掲載のルートには、自然に取り上げられる、取材を受ける、広告として掲載する、の 3 つがあります。対価を払って掲載される場合、その掲載は事業者の表示として扱われうるため、広告であることが読者に分かる表示が必要です。広告であることを隠した掲載はステルスマーケティング規制(景品表示法・2023 年 10 月〜)の対象となりえ、措置命令の対象です。内容が品質を実際より良く見せていれば優良誤認にもあたり、その場合は課徴金もありえます。責任を負うのは、依頼した事業者の側です。