この記事の要点
- 稟議書には「いまの見え方・なぜいまか・やる順番・費用の幅・効果の測り方とやめどき・リスクとやらないこと」の 6 つを書きます
- 最初は「調査費」として単発の診断や自社での計測から始め、結果を見て次の稟議で続けるかを決める 2 段階にすると通りやすくなります
- 分かっていること(いまの数字・根拠の強い打ち手)と、分かっていないこと(効果の大きさ・期間)を分けて書くことが、いちばんの信頼につながります
稟議書を読む人は、何を気にしているのですか?
読む人によって、気にするところが違います。6 つの項目は、この 4 人の疑問に順に答える形にします。
| 読む人 | 気にすること | 効く書き方 |
|---|---|---|
| 決裁者(部長・事業責任者) | お金をかける価値があるか。競合に負けていないか | 競合と並べた、いまの数字 |
| 情報システム部門 | どんな情報を、どこに渡すのか | 渡す情報と扱いを 1 行で書く |
| 法務 | 広告や口コミの規制に触れないか | やらないことを明記する |
| 起案者自身 | 仕事が増えすぎないか | 誰が何をするかを書く |
稟議書には、何を書けばいいのですか?
6 つの項目です。
| # | 項目 | 書くこと |
|---|---|---|
| 1 | いまの見え方 | 社名なしの質問で、自社と主な競合が何回中何回挙がったか(測った日・AI・条件つき) |
| 2 | なぜ、いまなのか | 社外の調査の数字 1〜2 個と、社内で起きていること |
| 3 | 何をするか | 施策の名前ではなく、順番 |
| 4 | 費用の幅 | 第 1 段階の金額と、第 2 段階の想定の幅 |
| 5 | 効果の測り方と期間 | 同じ条件の前後比較・売上に近い数字・やめどき |
| 6 | リスクとやらないこと | 法務・依頼先・情報の扱い |
「いまの見え方」は、どう書けばいいですか?
社名を入れない質問を 3 回ずつ聞いた結果を、条件とセットで書きます。「AI に聞いたら出てこなかった」の 1 行では、たまたまかもしれないからです。予算を取る前に、まず測ります。測るだけなら、無料の範囲でもできます(LLMO 計測の方法:AI 検索での見え方を無料で測る)。
「なぜ、いまなのか」には、どんな数字を使えますか?
公的な調査や、規模の大きい調査の数字を 1〜2 個添えます。
| 数字 | 出典 |
|---|---|
| 生成 AI サービスを使ったことがある個人は 58.8% | 総務省 令和 8 年版 情報通信白書(2026 年 7 月) |
| BtoB の購買担当者の 51% が、Google より AI チャットボットで調べ始めることが多い | G2 の調査(2026 年 4 月公表・北米・欧州・アジア太平洋の 1,076 人) |
海外の調査や自己申告の数字は、そのまま自社に当てはまるとは限りません。稟議では「方向として」と添えて使います。BtoB の購買の動きは BtoB の購買担当者は AI で比べている にまとめています。
費用は、どう見積もればいいですか?
公開されている価格の幅を示し、最初は小さく始める 2 段階で書きます。
| 依頼の形 | 公開価格の幅(2026 年 9 月に当方が調べた範囲) |
|---|---|
| 計測ツール | 月 3〜10 万円 |
| 単発の診断 | 10〜30 万円前後から |
| 継続の支援 | 月 15〜75 万円+初期費用 0〜30 万円 |
| 最低契約期間 | 1〜6 か月 |
いきなり継続の契約を書くより、第 1 段階を「調査費」として、単発の診断や自社での計測にとどめる形が通りやすいと考えています。結果を見てから、第 2 段階として続けるかを次の稟議で決めます。価格の差がどこから来るかは LLMO 対策の費用相場:ツール・診断・コンサルの価格帯 で整理しています。
効果の測り方とやめどきは、どう書けばいいですか?
同じ条件の前後比較で測ること、売上に近い数字を足すこと、やめどきを先に決めることの 3 つを書きます。いちばん突っ込まれるところです。
AI の答えは、施策がなくても動きます。
施策も、モデルも、質問も変えていない 27 分のあいだに、出現率は全体で 9 ポイント動きました。この幅に収まる変化は、施策の効果とは言えません(LLMO の効果検証:モデル交代と施策の効果を分ける)。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 前後比較の条件 | 質問・AI・回数・時間帯をそろえる。施策の前に 2 回測り、何もしなくても動く幅を先に知る |
| 売上に近い数字 | 問い合わせフォームの「何で知りましたか」に「AI(ChatGPT など)」を足す。社名での検索の数(Search Console)の推移を見る |
| 期間 | 揺れより大きな変化を確かめるには、数か月の前後比較を見込む。1 か月で結論を出す計画にしない |
| やめどき | 「◯か月後に◯◯が変わっていなければ、続けるかを見直す」と書く |
報告の書き方は LLMO レポートで、社内に何を出すか にまとめています。
リスクとして、何を書いておけばいいですか?
法務・依頼先・情報の扱いの 3 つです。やらないことを先に書くと、法務の確認が早く済みます。
| リスク | 書くこと |
|---|---|
| 法務 | 割引などを条件に口コミを頼まない(ステルスマーケティング規制の対象。措置命令の対象であり、内容によっては優良誤認として課徴金もありえる)。計測の結果を「AI 検索で 1 位」と広告に書かない |
| 依頼先 | 「必ず出るようにします」と成果を約束する依頼先は避ける。AI の答えは毎回変わり、約束できる性質のものではない |
| 情報の扱い | 計測ツールや依頼先に渡す情報(質問の文面・社名・競合の名前など)と、その扱いを情報システム部門に説明できるようにする |
法務の論点は 口コミを増やす LLMO 施策と、ステマ規制 と 「AI 検索で 1 位」の広告表示は景表法に触れるおそれ で詳しく扱っています。
稟議書 1 枚にまとめるときの項目は、次のとおりです。
| 欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 件名 | AI 検索における自社の見え方の調査と改善(第 1 段階) |
| 現状 | 社名なしの質問◯本 × ◯回で、自社◯回中◯回、主な競合◯回中◯回(測った日・AI・条件) |
| 背景 | 社外の調査の数字 1〜2 個(出典と「方向として」の注記)と、社内で起きていること |
| やること | 測る → 根拠のページの書き出し → 根拠の強い打ち手 → 再計測 |
| 費用 | 第 1 段階の金額と、第 2 段階の想定の幅 |
| 効果の測り方 | 同じ条件の前後比較・問い合わせの「AI で知った」・社名での検索の数 |
| やめどき | ◯か月後に◯◯が変わっていなければ、続けるかを見直す |
| やらないこと | 対価つきの口コミ依頼・「AI 検索で 1 位」の表示・成果を約束する依頼先 |
本記事の主張を、根拠の強さとあわせて整理します。
| 主張 | 根拠の強さ | 根拠 |
|---|---|---|
| 施策がなくても、出現率は短い時間で動く | ◎ 実証 | 当方の実測(27 分で 9 ポイント) |
| 1 か月の前後比較では、揺れと効果を区別しにくい | ◎ 実証 | 上の揺れの幅と、モデルの交代が起こりうること |
| 2 段階で予算を取ると、稟議が通りやすい | △ 仮説 | 当方の考え方。通りやすさを比べたデータはない |
| 効果が出るまでの期間 | △ 仮説 | 通例 1〜3 か月と言われるが、根拠は経験則 |
根拠の強さは、◎ 実証(当方の実測、または複数の独立した調査が同じ結論)/○ 有力/△ 仮説/✕ 否定されつつある、の 4 段階で示しています。
※ 外部の調査・各社の公開価格は、記載した時点のものであり、当方が独自に検証したものではありません。